- 退職金を受け取ったが、預金と運用のどちらにすればいいかわからない
- 退職金の運用におすすめの投資先が知りたい
- 退職金の運用について相談できる先を教えてほしい
退職金を受け取ったあと、「銀行にそのまま預けるべきか」「一部を運用した方がよいのか」と迷う人は多いだろう。
日本銀行の統計(金融機関の店頭表示金利の平均)では、2026年5月の普通預金は年0.254%、1年の大口定期預金(1,000万円以上)は年0.378%だった。
預金は安全性が高く、生活資金や緊急資金の置き場所として重要だ。一方で、退職後の生活が20年以上続く可能性を考えると、退職金の一部を運用に回す選択肢も検討したい。
ただし、退職金は老後生活を支える大切なお金である。全額を投資に回すのではなく、「すぐ使うお金」「数年以内に使うお金」「長期で運用できるお金」に分けて考えることが大切だ。
この記事では、退職金の預け先、銀行預金と資産運用の使い分け、おすすめの投資先、運用時の注意点、相談先を解説する。
\退職金を安心して運用したい人へ/
退職金はまず「生活資金・予備資金・運用資金」に分ける
退職金の預け先を決める前に、まず退職金を目的別に分けよう。
退職金はまとまった金額で受け取るため、すべてを普通預金に入れたままにしたり、反対にすべてを投資に回したりしがちだ。
しかし、退職後は収入が減る一方で、生活費・医療費・介護費・住宅修繕費などの支出が発生する可能性がある。
以下のように、使う時期に応じて置き場所を変えると判断しやすい。
| 資金の種類 | 使う時期 | 主な置き場所 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 生活資金 | 毎月使う | 普通預金 | 生活費の引き落としや日常支出に備える |
| 予備資金 | 数年以内に使う可能性がある | 普通預金・定期預金・個人向け国債など | 医療費、介護費、住宅修繕費などに備える |
| 運用資金 | 10年以上使わない可能性が高い | NISA、投資信託、債券、REITなど | インフレ対策や老後資金の寿命を延ばす目的で運用する |
退職金の運用では、「どの商品が一番増えるか」よりも、「どの資金を、いつ使うか」を先に整理することが重要だ。
まずは、毎月の生活費、年金の受給開始時期、退職後に残る住宅ローン、家族への支援、医療・介護費の見込みを確認してから、運用に回せる金額を決めよう。
退職金の基本的な預け先は銀行|預金の特徴を確認

退職金のうち、すぐ使う生活資金や数年以内に使う予定のお金は、銀行預金で管理するのが基本となる。
銀行預金には、普通預金、定期預金、退職者専用定期預金などがある。
| 預け先 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 普通預金 | いつでも引き出しやすく、生活費の管理に向いている | 金利は低めで、退職金を大きく増やす目的には向きにくい |
| 定期預金 | 普通預金より金利が高い場合があり、一定期間使わない資金に向く | 中途解約すると中途解約利率が適用される場合がある |
| 退職者専用定期預金 | 退職金受取者向けに金利上乗せなどの条件がある場合がある | 申込期限、預入期間、満期後金利、投資商品とのセット条件などを確認する必要がある |
普通預金
普通預金は、退職後の生活費や緊急時のお金を置く場所として使いやすい。
いつでも引き出せるため、年金の受給開始までの生活費、医療費、介護費、税金の支払いなどに備えられる。
一方で、普通預金の金利だけで退職金を大きく増やすことは難しい。
そのため、退職金の全額を普通預金に置き続けるのではなく、すぐ使う資金と運用できる資金を分けることが大切だ。
定期預金
定期預金は、一定期間使う予定のないお金を預ける方法だ。
普通預金より金利が高い商品もあるため、数カ月〜数年は使わない予備資金の置き場所として検討できる。
ただし、定期預金を途中で引き出すには中途解約が必要になる場合がある。
中途解約すると、当初の金利ではなく中途解約利率が適用され、想定より利息が少なくなることがある。
定期預金を利用する場合は、生活費や急な支出に使うお金を普通預金に残したうえで、使う時期が決まっていない資金だけを預けるようにしよう。
退職者専用定期預金
一部の金融機関では、退職金を受け取った人向けの定期預金を取り扱う場合がある。
通常の定期預金より高い金利が設定されることもあるため、退職金の一部を安全性重視で預けたい人には選択肢になる。
ただし、退職者専用定期預金には、退職金受取後の申込期限、預入期間、預入上限、満期後の適用金利などの条件がある。
また、投資信託や外貨建て商品とのセット販売になっている場合は、預金部分の高金利だけで判断しないことが重要だ。
投資商品部分には元本割れリスクや手数料があるため、商品全体の条件を確認しよう。
退職金が1,000万円を超える場合は預金保険制度も確認する
退職金を銀行に預ける際は、預金保険制度も確認しておきたい。
金融庁によると、定期預金や利息の付く普通預金などの一般預金等は、預金者1人あたり1金融機関ごとに合算され、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護される。
退職金が1,000万円を超える場合、同じ金融機関に全額を預けると、預金保険で保護されない部分が生じる可能性がある。
安全性を重視するなら、複数の金融機関に分ける、決済用預金を確認する、運用資金と生活資金を分けるなどの方法を検討しよう。
\退職金を安心して運用したい人へ/
退職金の一部は「資産運用」も検討しよう

退職金は、銀行に預けておけば安心という考え方もある。
しかし、退職後の生活が長く続くことや物価上昇を考えると、退職金の一部を運用することも選択肢になる。
ここでは、退職金運用が必要とされる理由と、取り崩しシミュレーションを確認しよう。
退職後の生活は20年以上続く可能性がある
厚生労働省の令和6(2024)年簡易生命表によると、平均寿命は男性81.09年、女性87.13年だった。
また、65歳時点の平均余命は男性19.47年、女性24.38年である。
つまり、65歳で退職した場合でも、20年以上の生活資金を見込む必要がある人は少なくない。
老齢基礎年金は原則65歳から受け取れるが、退職年齢によっては年金受給開始まで空白期間が生じることもある。
退職金は、その空白期間の生活費や、年金だけでは足りない生活費を補う重要な資金となる。
退職金だけでは足りない場合がある
65歳で2,000万円の退職金を受け取り、毎月10万円ずつ取り崩す場合、どのくらいで退職金がなくなるかを考えてみよう。
以下は、税金・手数料・価格変動を考慮しない単純試算である。年率3%や5%で安定して運用できることを保証するものではない。
| 運用の有無 | 退職金が続く目安 |
|---|---|
| 運用なし | 約82歳まで |
| 年率3%で運用できた場合 | 約88歳まで |
| 年率5%で運用できた場合 | 約98歳まで |
※2,000万円から毎年120万円を取り崩す前提で単純計算。運用成果は一定ではなく、実際には元本割れや取り崩し期間の短縮が起こる可能性がある。
運用せずに取り崩す場合、2,000万円は約16年8カ月でなくなる計算だ。
一方、退職金の一部を運用しながら取り崩すと、運用成果によっては資金寿命を延ばせる可能性がある。
ただし、退職金は生活の基盤となるお金であるため、全額を投資に回すのは避けるべきだ。
生活費や予備資金を確保したうえで、長期で使わない資金の一部を運用する考え方が現実的だろう。
退職金運用におすすめの投資先
退職金の資産運用で検討しやすい投資先は、以下の4つだ。
- 投資信託
- 個人向け国債・債券
- 株式投資
- REIT(不動産投資信託)
退職金運用では、リターンの大きさだけでなく、値動きの大きさ、換金しやすさ、手数料、使う時期を確認して選ぶ必要がある。
投資信託
投資信託は、投資家から集めた資金をまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資する金融商品である。
1本の商品で複数の国や資産に分散投資できる商品もあるため、退職金を一部運用したい初心者にとって検討しやすい。
特に、NISA口座で低コストのインデックス型投資信託を積み立てる方法は、長期・分散・積立に向いている。
ただし、投資信託にも元本保証はない。信託報酬などのコストも確認しよう。
個人向け国債・債券
比較的安定した運用を重視するなら、個人向け国債や債券も選択肢になる。
個人向け国債は1万円から購入でき、発行後1年を経過すると、原則として額面1万円単位で中途換金できる。
大きく増やす目的には向きにくいが、預金だけでは不安な予備資金の一部や、退職後の安定資産として検討できる。
一方、社債や外国債券には発行体の信用リスクや為替リスクがある。利回りの高さだけで判断しないようにしよう。
株式投資
株式投資は、企業が発行する株式を購入し、値上がり益や配当収入を狙う投資方法だ。
配当金や株主優待を期待できる一方、企業業績や市場環境によって株価が大きく下落することもある。
退職金を使って株式投資をする場合、1社や1業種に集中投資するのは避けたい。
余裕資金の一部で始める、複数銘柄に分散する、投資信託と組み合わせるなど、リスクを抑える工夫が必要だ。
REIT(不動産投資信託)
REITは、不動産投資法人が投資家から資金を集め、オフィスビル、商業施設、住宅、物流施設などに投資し、賃料収入や売却益を分配する商品だ。
現物不動産を購入するより少額で始めやすく、証券取引所で売買できる点が特徴である。
不動産からの分配金に関心がある人には選択肢となるが、金利上昇、不動産市況の悪化、災害、空室などのリスクもある。
退職金運用では、REITだけに偏らず、投資信託や債券などと組み合わせて検討しよう。
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自分に合った退職金の預け先を選ぶ方法と注意点

退職金の預け先を選ぶときは、利回りだけで判断しないことが大切だ。
使う時期、必要な金額、許容できるリスク、手数料、換金しやすさを総合的に見て判断しよう。
おすすめの運用方法は「分ける・ずらす・続ける」
退職金を運用するときは、「分ける・ずらす・続ける」を意識しよう。
- 分ける
生活資金、予備資金、運用資金に分ける - ずらす
まとまった資金を一度に投資せず、購入時期を分散する - 続ける
短期的な相場変動で慌てず、長期の方針を守る
退職金を一度に投資すると、直後に相場が下落した場合の影響が大きくなる。
たとえば、運用資金を数回に分けて投資したり、毎月積み立てる形にしたりすれば、購入タイミングを分散できる。
また、株式・債券・投資信託・REITなど、値動きの特徴が異なる資産に分散することで、特定の資産が下落したときの影響を抑えやすい。
NISAの活用も検討する
退職金の一部を投資信託や株式で運用するなら、NISAの活用も検討したい。
NISAでは、株式や投資信託などの売却益や配当・分配金が非課税になる。
2024年以降のNISAは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、併用により年間最大360万円まで投資できる。非課税保有限度額は最大1,800万円である。
退職金をNISAで運用する場合は、一括で成長投資枠を使い切るより、つみたて投資枠を活用して時間分散する方法も検討しよう。
なお、NISAは税制優遇制度であって、投資の利益を保証する制度ではない。NISA口座で購入した商品でも、元本割れする可能性はある。
退職金運用で注意すべきこと
退職金運用では、以下の点に注意しよう。
- 退職金の全額を投資に回さない
- 高利回りをうたう商品に飛びつかない
- 手数料や解約条件を確認する
- 外貨建て商品は為替リスクを確認する
- 相場下落時に生活費へ影響が出ない金額で運用する
特に退職金を受け取った直後は、高利回りをうたう投資勧誘を受けることがある。
金融庁は、無登録業者との取引は高リスクであり、取引相手が登録を受けているか確認するよう注意喚起している。
「元本保証で高利回り」「必ず儲かる」「短期間で増える」といった説明には注意し、内容を理解できない商品は契約しないようにしよう。
2008年のリーマンショックのように、株式市場や不動産市場が大きく下落する局面もある。
一時的な下落で慌てて売却しないためにも、退職金のうち投資に回す金額は、長期で保有できる範囲にとどめることが大切だ。
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退職金の運用はプロに相談する選択肢もある

退職金の運用は、生活費、年金、税金、保険、相続、医療・介護費などと関係する。
投資商品の知識だけで判断するのが難しい場合は、専門家に相談するのも選択肢だ。
ただし、専門家に相談しても、運用損失を完全に避けられるわけではない。
相談先の得意分野、登録状況、報酬体系、提案できる商品を確認し、自分でも納得して判断することが重要だ。
退職金の預け先をプロに相談するメリット
退職金の運用を専門家に相談すると、以下のような点を整理しやすくなる。
- 老後の生活費と年金見込み額の差
- 退職金のうち、預金で守る金額と運用に回す金額
- NISAやiDeCoなど制度の使い分け
- 保険や住宅ローンとのバランス
- 相続や贈与も含めた資産管理
退職金は一度にまとまった金額で受け取るため、自分だけで判断すると、預金に置きすぎたり、反対にリスクを取りすぎたりすることがある。
専門家への相談は、退職金の使い道を冷静に整理するための手段として活用するとよい。
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資産運用の相談先は?
退職金の運用について相談できる主な窓口は、証券会社、FP、IFAの3つだ。
| 相談先 | 特徴 | 向いている相談 |
|---|---|---|
| 証券会社 | 投資信託、株式、債券など具体的な金融商品の相談・取引ができる | 投資商品の選び方や口座開設を相談したい人 |
| FP (ファイナンシャルプランナー) | 家計、保険、住宅ローン、年金、税制など幅広いお金の相談ができる | 退職後の生活設計や家計全体を見直したい人 |
| IFA (金融商品仲介業者) | 金融商品取引業者や登録金融機関の委託を受け、有価証券売買の媒介などを行う | 長期的な資産運用方針や金融商品を相談したい人 |
証券会社
証券会社は、投資信託、株式、債券などの金融商品を取り扱う相談先だ。
退職金の一部をNISAで運用したい場合や、債券・投資信託を比較したい場合に相談しやすい。
ただし、証券会社によって取り扱う商品や手数料は異なる。
すすめられた商品については、販売手数料、信託報酬、解約条件、元本割れリスクを必ず確認しよう。
FP(ファイナンシャルプランナー)
FPは、人生の目標をかなえるための総合的な資金計画を立て、家計、税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度など幅広い知識をもとに相談者をサポートする専門家だ。
退職金をどう使うかだけでなく、退職後の毎月の生活費、保険の見直し、住宅ローン、相続まで含めて相談したい人に向いている。
ただし、FPによって得意分野や報酬体系は異なる。
具体的な金融商品の売買を扱えるかどうかは、資格や登録状況によって異なるため、相談前に確認しよう。
IFA(金融商品仲介業者)
IFAは、金融商品仲介業者として、証券会社や銀行などの金融商品取引業者・登録金融機関の委託を受け、有価証券の売買の媒介などを行う相談先だ。
特定の証券会社の社員ではないため、長期的な資産運用の相談先として検討されることがある。
一方で、IFAも所属金融商品取引業者や報酬体系によって提案できる商品が異なる。
相談する場合は、金融商品仲介業者として登録されているか、どの証券会社の商品を扱うのか、手数料がどのように発生するのかを確認しよう。
\退職金を安心して運用したい人へ/
退職金をどこに預けるべきか迷っているなら、まず使い道を整理しよう

退職金の預け先は、銀行預金だけではない。
ただし、退職金は老後生活を支える大切なお金であるため、全額を投資に回すのは避けたい。
まずは、生活費としてすぐ使うお金、数年以内に使う予備資金、10年以上使わない運用資金に分けて考えよう。
普通預金や定期預金は安全資金の置き場所として役立ち、投資信託や債券、REITなどは長期で使わない資金の運用先として検討できる。
退職金を運用する際は、以下のポイントを押さえておきたい。
- 生活費と予備資金は預貯金で確保する
- 投資に回すのは長期で使わない資金に限定する
- 退職金を一括投資せず、時間を分けて投資する
- NISAなどの税制優遇制度を活用する
- 高利回りや元本保証をうたう勧誘に注意する
- 不安がある場合は専門家に相談する
退職金の預け先に迷う場合は、いきなり商品を選ぶのではなく、自分の年金額、生活費、医療・介護費、住宅費、相続の考え方を整理しよう。
必要に応じて証券会社、FP、IFAなどの専門家にも相談し、リスクと手数料を理解したうえで、自分に合った退職金の運用方法を選んでほしい。
\退職金を安心して運用したい人へ/
出典
日本銀行「Average Interest Rates Posted at Financial Institutions by Type of Deposit (Monthly)」(更新日:2026年5月19日)
金融庁「預金保険制度」
厚生労働省「令和6(2024)年簡易生命表の概況」(公開日:2025年7月25日)
日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(更新日:2026年4月1日)
金融庁「NISAを知る」
財務省「個人向け国債窓口トップページ」
日本取引所グループ「REIT」
金融庁「基礎から学べる金融ガイド」(公開日:2023年12月26日)
金融庁「無登録業者との取引は要注意!! ~無登録業者との取引は高リスク~」(更新日:2024年6月28日)
日本FP協会「ファイナンシャル・プランナー(FP)とは」
日本証券業協会「金融商品仲介業者」


